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第一章・似た者同士。(1)
(二)
ライオネル・フォンテーンは一本の添え木を握り、先端に鋭い刃物を取り付けている短刀、ジャマダハルという名のダガーを手に、次々と繰り出される漆黒の刃を受け止め、または払い退け、なんとか攻撃を回避していた。
濡れたような肩まであるブロンドは彼が動くたびに棚引く。細く繊細な手足。まるで舞うように仕掛けてくる攻撃はとても美しい。見た目からして華奢な身体から繰り出される斬撃は強力だ。
これらの繰り出される攻撃は並みの悪魔ではない。また、鼻孔から酸素を取り込む度に漂ってくる甘い香りは中枢神経を通り、ライオネルの脳を麻痺させてくる。
そして人間離れした、ルビーを思わせる澄んだ真紅の目とふっくらとした濡れた赤い唇。剥き出しになっている陶器のような白い柔肌の胸部に乗っている二つのぷっくりとした赤い蕾は今にも零れ落ちそうなほど熟れている。
恐ろしく卑猥で美しい容姿。この独特な攻撃手段からして、正体は容易に察しが付く。
彼は悪魔の中でも稀少で、強力な力を持つ淫魔 に違いない。
しかしどんなに強力な淫魔でも弱点はある。彼らは精力を得なければ生きていけない存在なのだ。
しかしそれは彼だけではない。人間の活力を吸うヴィガーヴァンパイアのライオネルもまた同じだった。
ただ目の前にいる彼は、精力――精液が食事なのに対して、ライオネルの方は活力を貰うという点にある。
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