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第一章・似た者同士。(2)
もともとはライオネルもヴァンパイアではない。三〇という年齢に達するまでは人間だった。しかし父親の勝手な行動で、太陽さえも拝めない化け物へと変貌させられた。生きるためとはいえ、選ぶことのできない食事方法を取らされるのは残酷だった。
この淫魔がどんなに怒りを向けてこられようとも、彼と自分は通じる部分がある。
先ほどの悪魔とは違って、人間の精力を食事の手段とする淫魔はむやみやたらと人間に危害を加える筈はないのだ。
わざわざこちらが消し去る義務はない。
――最早、目的は果たされた。
ライオネルは彼のみぞおちに拳をお見舞いする。淫魔はほんの少し抵抗を見せたものの、食らわされた不意打ちに勝てず、ずるずると地面に崩れ落ちた。
そしてライオネルは、生まれたこの隙に背を向け、闇に消えた。
ライオネルの同情が淫魔の怒りをさらに買うということとも知らずに――。
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