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第一章・魅了する肉体。(1)
(五)
「なんやねん自分ら仲間ちゃうんか!! てっきりそうやと思って入れたんやけど……まあ、そりゃそうやんな。無愛想ライオネルに仲間がいるなんておかしいもん」
ライオネルに思わぬ助け船を出した少女は両腕を組み、わざとらしく深いため息を吐いた。
詳細はよく判らないが、どうやら彼女はライオネルを訪ねてやって来た淫魔が知り合いだと思い込み、この家に招き入れたらしい。
彼女はライオネルの同居人で、名をシンクレアという。元よりくりっとしたはしばみ色の大きな目は腰まである赤毛の髪をひとつに束ねて結っているおかげで随分大きく見える。その目は今やあきれ顔だ。
彼女の見た目は一〇歳ほどだが、この姿は仮のものだった。実際年齢は一〇三歳にも及ぶ。神の使い魔である彼女は、その実体こそ白猫だ。役割としてはヴァンパイアハンターとして活動しているライオネルの補助と、情報収集役を請け負っている。
地下室から二階踊り場に移動したライオネルの武装は完璧だった。真っ白なチュニックに血のように赤いベスト。幾本ものナイフを内側に隠せる漆黒のコート。それから靴底にはナイフを仕込んだブーツを履いている。
「――それで今夜の獲物は?」
右の腰のベルトには頑丈な鎧さえも打ち砕くことのできるダガー、ジャマダハルを――反対側には小型だが強力な一撃をお見舞いできる六インチのリボルバーを固定しながら、ライオネルは同業者のシンクレアに尋ねた。
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