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第一章・魅了する肉体。(5)

 不穏な空気を感じたライオネルは目を凝らす。すると、どこかの教会の祭司だろう、白の祭服を着た人物が、人間の三倍はあるだろう巨大な蛇に何やら液体を与えている姿が見えた。  その人物の顔は深くフードを被っていて見ることはかなわないが、身長はライオネルと同じくらいだろうか。細身ではあるが肩幅が広いことから、性別は容易に男であると判断できる。  果たして祭服の男は人間だろうか。魔力は依然として感じられない。  目の前にいるあの人物は何者なのか。  ――どうやら彼らはまだ自分のことに気が付いていないようだ。ライオネルは彼らに悟られぬよう、そのまま魔力を抑え、足音を殺してできる限り近づく。  一歩近づく毎に蛇の姿をした悪魔の魔力は少しずつ増幅しているのが判る。蛇は瘴気の渦を作り、側にある木々を根こそぎ枯らしていく。  この状況は明らかにおかしい。  ライオネルは目を細めた。  ――それというのも、本来ならば人間界に巣くう悪魔はそこまでの魔力を持っておらず、闇を這い回るばかりの臆病な性格だった。それ故に、人間に入れ知恵を吹き込んだり弱みにつけ込む。瘴気で木々を枯らすなんて論外だ。しかし、悪魔は最近になって従来とは異なってきているのも確かだった。  ――近頃、人間界では奇妙な白骨化遺体が多く発見されていた。人間は皆、過去数十年に及ぶ遺体が発見されたのだと言い張っているが、実は違う。

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