これが正真正銘のレヴィアサンならば炎を吐く筈だ。ライオネルは腰からリボルバーを手にした。トリガーを引く。 　ライオネルは強靱な肉体美を持っている。そしてさらに身体能力も高い。素早い攻撃も彼が好む戦い方だった。飛び道具よりもダガーの方が得意だ。しかし、今彼がリボルバーを手にし、彼が遠距離戦に持ち込んだその理由は至極簡単だ。この悪魔がレヴィアサンか否かを知るため、ただそれだけだった。 　ライオネルが放った銃弾は鋼のように硬い鱗によって弾かれる。その間にも、淫魔は攻撃を止めない。二度、三度と悪魔を斬りつける。悪魔は耳を劈く声を上げ、その巨体をうねらせ淫魔を襲う。淫魔が避けると、攻撃対象がライオネルへと移った。そのまま鋭い歯を剥き出しに襲い来る。 　一向に炎を吐く傾向はない。――ともすれば、この悪魔は、 「紛い物か」 　そう吐き捨てると、ライオネルは、今度は鎧砕きのジャマダハルを手にした。地を蹴り、宙へ出ると身体を反転させた。漆黒のコートが宙を舞う。 　そして、ライオネルは地へ落ちる力を利用して魔力を練り上げ、ジャマダハルに集中させた。そのまま這い回る魔族に狙いを定め、貫く。 　悪魔は強烈な悲鳴を上げて苦痛を訴える。長い巨体をくねらせ、木々を薙ぎ倒していく。ライオネルがジャマダハルを悪魔の身体から引き抜けば、淫魔が傷口に狙いを定める。剣をねじ込んだ。