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第一章・魅了する肉体。(11)

――――」  ライオネルが持ち得る情報はあまりにも少ない。それに対して次々と浮上する疑問が多すぎる。  とにかく、今はこの現状を整理し、事の真相をシンクレアに探って貰うほか手段はない。なにせ自分は太陽が拝めない身体へと変化させられたのだから。  この混沌とした闇は長く続かない。後数時間もすれば時期に朝が来る。  なかなか自分の思うとおりに事が運ばないことが腹立たしい。ライオネルが元来た道へ戻ろうと踵を返した時だった。 「待て! まだ終わっていない!!」  漆黒の刃が月光に照らされ、妖しく光る。鋭い切っ先が頬を掠めた。  あまりにも苛立ちすぎたライオネルの腹の虫は理性の限界にまで達する。淫魔の腕を絡め取ると大木に押しつけた。  ライオネルにとって、淫魔を黙らせるのは至極簡単だ。彼の誘惑に乗ればいいだけのことだから。  ライオネルは大口を開けて腹の底から太い声を出すと赤い唇を奪う。  ライオネルによって拘束されている細い腕は抵抗を見せた。しかしライオネルと淫魔の体格差はあまりにも違う。ライオネルが淫魔に覆い被さった段階で力の差は歴然だった。抵抗する両足の間に膝を差し込み固定すれば、もう逃れられない。  いつまでも自分に付きまとう淫魔が悪いのだ。  ライオネルはそう言い聞かせ、彼の誘惑に従った。  指を滑らせてチュニックの下を通ると、胸の上に乗っているふたつの蕾に触れた。するとすぐに甘い声が上がる。肉体を以て食事をする淫魔は快楽に貪欲だ。

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