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第二章・蝿の王。(2)
もし、彼が正真正銘、パーシング・サーペントならば、ああも簡単に討ち滅ぼされるだろうか。第一、悪魔王直属熾天使の指導者が殺されたならば、悪魔王が黙ってはいまい。けれども悪魔王からは何も連絡が無いどころか、先ほど会った母ニヴィアでさえもその件について触れる様子はなかった。
いや、気に掛かることはまだある。本気を出した彼ならば、この地の全てを焼き尽くす程の劫火を吐く筈だ。それなのに炎を吐き出すこともなく消滅したのが気になる。
――しかも、である。アマデウスの魅惑術はどんな生物でも支配することができる強力な力だ。その魅惑術が通用しなかったことも疑問が残る。
――ということは、である。彼が偽物の可能性があった。何者かが模造品を作っている。
もしかすると近頃の悪魔凶悪化にも関わっているのだろうか。
謎が謎を呼び、より深まって絡み合う。
その『何者か』の謎はどうやら偽物の近くにいた祭服の男と関係がありそうだ。
ひょっとすると兄達の死と関わりがあるのかもしれない。何より、アマデウスの直感がそう告げていた。
(兄様達を殺した犯人は必ず見つけ出し、抹殺してやる)
アマデウスは拳を固く握り締め、決意を新たにする。彼が見つめる先はシンクレア同様、祭服の男だ。
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