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Ⅱ【再会編】(14)

 速くもなければ遅くもない。アマデウスは注意深い足取りで歩み寄る。隣にいる人間を視界の端に入れると、彼は背筋を緩め、頬を朱に染めてこちらを見ていた。彼はアマデウスに魅了され、まさに骨抜き状態だ。 「おいおい、本気か?」  ベルゼブルは俄に信じ難いと、惚けている男の腕に収まっている白猫とアマデウスを見比べた。  たしかにそうだろう。悪魔のアマデウスにとって、神は相反するものだ。神の御使いと知り合いなんてどう考えても不相応である。ベルゼブルが尋ねるのも無理はない。しかしアマデウスは毅然とした態度で距離を縮めていく。 「」  ベルゼブルとの距離は目と鼻の先だ。アマデウスはそこでようやく立ち止まる。訝しがるベルゼブルに、臆することなくもう一度、凜とした態度を見せた。 「なかなか面白いものを飼っているのだな」  ベルゼブルは左右に首を振ると、返してやれと配下の人間に顎で指示した。  無論、彼はアマデウスの発言を信用してはいない。しかし一度言いだしたら梃子でも動かない頑固な従弟(アマデウス)の性格をよく知っている。当然のことながら、アマデウスにすっかり魅了されている人間はベルゼブルの命令に逆らう筈もない。白猫を彼の腕の中へ返した。  腕の中に戻った白猫シンクレアの身体が小刻みに震えている。アマデウスは丸まった背中をそっと撫でる。 「別に、どうでもいいだろう」 「――しかしまさか君に会えるとは思ってもみなかったよ。相変わらず美しい――いや、『より一段と美しさが増した』と言うべきか……実に美しい」
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