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第二章・実は仲が良い。(2)

 幸い生物学者として研究のため、各地を旅していた妹のコルベルは父親の脅威から逃れることができた。しかし心優しい彼女は自分自身の探求という人生設計の他に父親の身勝手な振る舞いによって化け物と化した兄のライオネルを人間に戻すという課題も加えられた。  そして今から三年前のことだ。共同研究者から、『コルベルと連絡がつかなくなった』という知らせが入った。  それからのライオネルは壮絶な人生を送ることになる。彼は行方知れずになった妹を捜すため、神と契約を果たした。妹に関する情報を提供してもらう代わりに、人間界で活発化する悪魔についての原因を探ると共に排除するという、ヴァンパイアハンターとしての使命を与えられた。  妹の行方が判らなくなってから僅か三年だというのに、恐ろしく長い時をこうして生きている気がする。いくら不死身の肉体を得たとはいえ、相手は悪魔だ。一歩間違えれば死を招く。それに加えて、人間の頃には当然のように感じた太陽さえも天敵になってしまった。  消息が消えた妹は果たして無事でいてくれているだろうか。  まさかもう事は既に手遅れで、父親は妹を見つけ出し、自分と同じような化け物に変えてしてしまったのだろうか。  ――いや、それとも何らかの事故に巻き込まれたのか。愛する妹の生死さえも判らず、不安な毎日が続く。ライオネルの孤独で過酷な日常がこうして幕を開けるのだった。

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