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第三章・Am (2)

「……そもそもがここに来ること自体間違っているだろう」  気に入らないことがあればこうやって声を荒げるのはいつものことだ。シンクレアが大声を出すことにすっかり慣れきっているライオネルは静かに口を開いた。 「アマデウスは辛いもん背負ってるんや」  シンクレアは再び椅子に座り直し、小さく首を横に振った。 「なぜそう言いきれる」  ライオネルは片方の眉を訝しげに吊り上げた。 「そうでなかったら自分のリスクにもなる場所に来る必要がどこにあるねん! 祖母か母親か、父親か兄弟かは判らへん。けど、淫魔として生まれた家系には必ず淫魔という種族がおることはライオネルも知っとるやろ? 淫魔は人間みたいな弱質な精気じゃ満足できへん身体や。家族の側におった方がずっと良質な精気が貰える。けど、アマデウスは家族と一緒におらへん。そうでもしなあかん理由は絶対何かある。きっとベルゼブルと関係してるんや。そうやなかったらわざわざあの教団のことについて調べたりせぇへんもん。これはうちの勘やけどな、悪魔が凶暴化してるのも全部、あいつと繋がってる気がする。そうやろ? ただの一般人(ユマン)がここまで策略出来る筈ないもん。これにはアマデウスが何か知ってる筈や! きっとそうなんや!!」  シンクレアの大きな目がライオネルを写す。  彼女は膝に置いている拳を強く握っていた。  “だから淫魔を探せ。“  シンクレアはそう言いたいのだろう。

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