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第三章・Am (3)
「――――」
やれやれ、この神の使いはいったいどうして相反する悪魔に肩入れするのか。そしてことごとくをライオネルの利と繋げたがる。
悪魔とは人を騙し、唆 すのが習性だ。彼らはそうやって生きている。それを知っている筈の彼女はしかし悪魔の味方をする。悪魔に騙されているかもしれないことを懸念しない。
「――――」
(神との契約を守るために仕方なくあの淫魔を探すだけだ)
ライオネルは自分にそう言い聞かせ、無言で椅子から立ち上がった。
シンクレアもまた、ライオネルが何を考えているのかを理解したようだ。無言のまま去っていく背中を見送った。
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