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第三章・欲望と理性の狭間で。(5)
大剣を持つ青銅像にはみぞおちの部分に――。
槍を持つ青銅像には右肩の部分に――それぞれ魔力を受け取り、原動力となる拳ほどの大きさの核がひとつずつ。
ライオネルは木の幹を蹴り上げ、宙を舞う。大剣を手にした像がライオネルの後を追う。切っ先がライオネルの胴を真っ二つにせんとばかりに月光に反射して怪しく煌めく。
なんという衝撃――。
片方のリボルバーで青銅像の刀身を受け止めるものの、大気が大きく震え、木々がうねりを上げる。刃を受けたそのままの体勢で大木へと突っ込んでいく。その最中でもライオネルは迎撃を諦めない。もう一方の銃口がみぞおちに存在する核を捉える。トリガーを引き、撃ち抜く。
核は硝子が割れるような音を立て、消え去る。同時にがらがらと青銅像が崩れ落ちた。
まずは一体。
なんとか葬ったのも束の間、前方から槍を持った青銅像が追撃を仕掛けてくる。ライオネルは葬り去った像を足掛かりにして上空へ飛び上がる。懐からジャマダハルを取り出し握ると、木の幹を蹴った。
向かうは前方から恐ろしい速度で向かい来る槍を持つ青銅像だ。核が宿る右肩目掛けて突っ込む。
ライオネルは真っ向からやって来るスパイラル状の巨大な槍をジャマダハルで受ける。
衝撃が大気をうねらせる。
なんとかジャマダハルで槍を受けるものの、しかし螺旋状の槍は風をも味方に付ける。ライオネルの肩口の皮膚がいくらか裂ける。
激痛が彼を襲った。
しかしそれを感じている暇はない。
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