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第三章・欲望と理性の狭間で。(7)

 そして麻紐を辿った先にあるのは飾りを飲み込む後孔だ。後孔はしっかりと飾りを咥え込んでいる。  赤く染まった頬は快楽を切望し、赤目から流れる涙が濡らす。開いたきり閉ざすことができない唇は唾液を伝わせ、喘いでいる。  街外れのここでは流石に一般人(ユマン)や脆弱な悪魔達には嗅ぎつけられなかったのだろう。淫魔はすでに飢餓状態に陥っていた。  ライオネルは淫魔のあられもない姿に目を逸らす。  淫魔の姿はあまりにも残酷だと思うのに、それ以上に性的興奮を抑えられない自分もいた。中心にある雄はスキニーパンツを押し上げ、咥えている飾りの代わりに後孔に埋めたい。刻みつけたいと強調している。  化け物の成れの果てがこの底なしの欲望だ。自分自身の忌々しい肉体に反吐が出る。  ライオネルは奥歯をきつく噛み締める。噛み締めた口の中から鉄の味がする。  肩口に攻撃を受けた傷の痛みが欲望に負けそうになった身体を現実に引き戻してくれる。青銅像との戦いもまんざらではなかったとライオネルは内心自分を宥めた。  なるべく浅い呼吸を心がけ、淫魔から放たれる妖しくも甘い香りを拒絶しながら、縛られているその手足を解放してやる。  きつく拘束されていたのだろうその手首足首にはしっかりと紐の後が残っている。  たったふたつの拘束を解いてやるのにどれほどの時間がかかっただろうか。ライオネルにとって、とても長い時間のように思えた。  残るはあと一箇所だが――

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