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第四章・思いがけない再会。(6)

 親しみを込め、抱き合う二人。その二人の姿を見ると、落ち着かない気分になるのは何故だろう。  ――たしかに、彼女を助けたのは紛れもなく自分だ。その彼女(コルベル)とこの紛い物が大切な間柄だということはこうして見ているだけでもよく判る。  しかし、である。この男は許可もなく自分本位でアマデウスを抱いた。その上、腹にはこの紛い物の子を宿した可能性だってある。  ――それなのに、自分の前でこんなに容易く女性(コルベル)と熱い抱擁を交わしているなんて! この男の無神経さには(はなは)だ許し難いこと極まりない。  腹立たしい。  アマデウスはきつく唇を噛みしめる。  ただただ恨みがましく目の前で繰り広げられている光景を見つめることしかできない。そんな自分もまた腹立たしいばかりだ。 「妹を(かくま)っていただき、お礼の言葉もありません。王子、心から礼を言います」  ライオネルの言葉を耳にした瞬間――アマデウスの苛立ちはすぐに消えた。  それというのも、ライオネルはコルベルのことを、『妹』と言ったからだ。  それはコルベル本人から聞いたことのある内容でもあった。三年前だっただろうか。それは本当に気まぐれだった。  アマデウスは兄達の仇を討つべく人間界に降りたばかりの当時、凶暴化した悪魔がコルベルを襲っている光景を目にしたのだ。  悪魔から彼女を助けた時もまた、コルベルは兄を捜していると言っていた。まさか彼女の兄がライオネルだったとは――

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