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第四章・思いがけない再会。(7)

 あまりの驚愕する真実にアマデウスは何度も瞬きを繰り返す。 「ぼ、ぼくは――。ほんの気まぐれで助けただけだ」  さて、自分は先ほど抱き合しめ合う二人を見て何を思っただろうか。  自分の胸に宿った感情は、果たして――。  アマデウスはふいに自分が恥ずかしくなり、顔を俯けた。  そんなアマデウスの気持ちを知ってか知らずか、ライオネルは深々と頭を下げ続ける。  アマデウスは彼の行動にまたもや驚いた。まさか堅物の紛い物(ライオネル)に頭を下げられるとは思ってもみなかったのだ。 「いいえ、妹を助けてくださったご恩は一生忘れることはありません」  アマデウスが慌てて首を振れば、ライオネルは続けてそう口にした。 「勿論、王子だけではありません。王、そして王妃、本当にありがとうございます」  困惑するアマデウスを余所に、ライオネルは三度、深々とお辞儀する。その隣では、妹のコルベルが歯に噛んだ笑顔を見せている。彼女もまた、兄と同じように頭を下げた。  二人の感動の再会でほんの少し、場の空気が柔らかくなった。しかしそれも束の間。  アマデウスがここにやって来た目的は何もライオネルと妹を再会させるためではなかったからだ。 「――しかしお前がここに戻ったということはつまり、ギデオン達を殺めた犯人が判明したということか」  ライオネルとコルベルの二人を見下ろし、王は深く頷いた後、アマデウスに視線を戻した。  ルジャウダのその表情は険しい。

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