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第三章・三人の王子を殺害した犯人。(6)

 悔しさのあまり、ルビーの目には涙が浮かぶ。どんなに痛みを伴おうとも我慢していた唇から、小さな嗚咽が漏れはじめた。  その姿を見たベルゼブルはにやりと笑い、首元にあったアスコットタイを引き抜いた。アマデウスを押し倒すと両腕に巻きつける。 「ようやくこの身体をおれのものにできる。どれほど待ちに待ったことか。――ああ、たまらないよアマデウス」  ベルゼブルの手が太腿へと伸び、布地の上から臀部――そして腹部へと滑らせる。これから先に待ち受けるおぞましい行為を考えただけで全身の毛が逆立つ。  アマデウスは身を捩るものの、体格差はベルゼブルの方が上だ。彼にのし掛かられてはどうにもできない。 「この胸に乗ったふたつの突起はいったいどれほどの数の一般人(ユマン)に触られた?」  ねっとりとしたその指がチュニックをたくし上げ、露わになったアマデウスの白い柔肌をなぞる。 「可哀相に……。望んでもいない食事はさぞ辛かっただろう?」  親指の腹で円を描くその指。  無論、アマデウスは憎き兄達の仇であるベルゼブルとのこの行為を望んでいるわけがない。  ――それなのに……。  ふたつの赤い蕾は徐々にツンと尖り、胸の上で強調する。 「当人の口よりも身体はずっと従順で良い子だ」  ざらついた舌が強調する蕾を捉えた。  憎き相手に屈してなるものかと、食いしばっていた唇が開く。華奢な腰が床から離れて弧を描く。どんなに抗おうとも精への官能には勝てない。抵抗しても染まっていく身体は卑猥そのものだ。

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