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第三章・欲望と理性の狭間で。(11)

 ふいに細い腕が伸びてきた。その腕はライオネルの後頭部に絡みつき、赤い唇がライオネルの口元を覆った。  弾力のある唇。深く深呼吸すれば鼻孔から香るのは、その身を破滅へと導く狂おしいほどの恐ろしい香り。これこそが、ライオネルが欲していたものだ。  ――ライオネルの理性はもうすでに限界だった。  淫魔というアマデウスの強い引力に抵抗できず、獣のような低い呻り声を上げる。  しなやかな肢体を押し倒した。  チュニックをかいくぐり、撫でれば絹のような肌触りだ。すっかり膨れきっている両胸にある蕾をその指で何度も摘み取ってやれば、淫魔は歓喜の声を上げ、その身をくねらせた。  ライオネルの広い背に腕が回る。細く長い指が漆黒の髪を梳く。その感触に我慢できなくなったライオネルはジッパーを下ろし戒めを解く。スキニーパンツの下で痺れを切らしていた肉棒を解放してやる。  赤黒く色づき、大きく反り上がった雄々しい雄。ライオネルの欲望を目にした淫魔はいっそう卑猥に喘ぐ。腰を揺らし、陰茎の根元を縛る紐を外せと強請る。  ライオネルは呻り声を上げ、彼の両足をより高く持ち上げて肩に担ぐ。青銅像との戦闘によって傷つけられた肉体の痛みはもうすっかり消え失せている。それだけ淫魔から放たれる香りが強力でライオネルを狂わせているのだ。  ライオネルは淫魔の根元を戒める麻紐ごと後孔が咥えている飾りを一気に抜き取る。淫魔は嬌声を上げ、身体を大きく反らした。

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