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第三章・情事のあと。(7)
アマデウスは下唇を強く噛み締めた。紛い物から目を逸らし、俯く。
「うちはここに残るわ。グリゴリ教団の動きが気になるし。把握できるのがおった方がお互いに動きやすいやろ。――うちやったら猫の姿で上手い具合に繰り抜けられるやろうし、引き続き探っとくわ。」
「くれぐれも奴らの側で変化だけはするな」
「わ~かってるって。もうあんなヘマせぇへん」
二人はこれからの動向を確認し合っているが、しかしアマデウスはそれどころではない。
今のアマデウスにとって、ここへ向かって来ているベルゼブルなんてどうだって良かった。ただ、目の前のヴァンパイアに心乱されるばかりで仕方がないのだ。
――第三章・完――
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