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第四章・王の弟。(2)
そこでルジャウダは弟の真意を探るべく、こうして城に招いたというわけだが――。
――果たしてあれが演技ではないと言い切れるだろうか。
知らぬ存是ぬを貫き通しながら、王の座を狙う我が子ベルゼブルの背中を後押ししている――もしくは後押しをする可能性だってある。
「どうお思いになって?」
「今はなんとも。しかしおそらく、ベルゼブルは近いうち仕掛けてくるでしょう。その時が鍵かと」
ニヴィアが口を開く。ライオネルが静かに答えた。
アマデウスの隣では、ライオネルは顎に手を当てて思考している。ライオネルの表情は真剣そのものだ。彼はどうにかこの争いに終止符を打とうとしているようだ。おそらくは妹コルベルが人間界で平和に暮らしていけるよう、兄としてどうにかしたいと思っているに違いない。アマデウスの身を案じていた兄達のように――……。
――今夜は少し肌寒い。二階にあるこの大広間は吹き抜けになっていて、窓には鉄製の桟で固定した木製の鎧戸があるばかりだ。おかげで風が夜気を運んでくる。アマデウスがほんの僅かに身震いした。
ライオネルはそんなアマデウスが目についたらしい。羽織っていたコートをアマデウスの両肩に掛けた。
見上げれば、彼は真剣な面持ちで広間にいる王とその弟に視線を向けている。こちら側を見ない彼はまるでアマデウスの身体を気遣うこの仕草が当たり前だとでもいうようではないか。
だが、彼がアマデウスを気遣う必要はない。
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