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第四章・彼が優しい理由。(2)
実はその絵の先は隠し部屋になっていた。貴婦人の絵を取り除くと薄暗い螺旋状に連なる階段が続く。
壁に灯りは取り付けられておらず、進めば進むほど闇が広がる。そのまま進めば書斎だ。
地下にある書斎は天界の光をも通さない。
アマデウスは手にしている蝋燭の明かりを頼りに進む。
すると間もなくして書斎に続く真っ赤な分厚い両開きの扉が視界に広がった。
中に入ると、薄暗い階段とは打って変わり、地下室とは思えないほど明るい。壁の所々にはランタンの灯りが設置されている。
書斎を進めば進むほどに視界はさらに広がりを見せる。大広間と同等の広さを誇るこの書斎は高い壁面に本棚が設置され、その本棚にさえも収まりきれない書物は山積み状態だ。見渡す限りの本が迷路のように置かれ、そこら中に溢れている。
この書斎にならきっと手がかりを見つけられる。
アマデウスは手にしていた燭台の火を消すと床に置き、生物学の書物があるだろう箇所に向かった。
すると何やら話し声が聞こえる。自分一人きりだと思っていたここにはどうやら先約がいたようだ。
高音だが落ち着きのある乾いたこの声はコルベルのものだ。
中にいるのはコルベル一人ではないらしい。耳を澄ませると聞こえてくるのは今になってはすっかり聞き慣れてしまった低い声音。ライオネルだ。
彼らもグリゴリ教が所持していた液体について手がかりを探しているのだろうか。
だったら丁度いい。このコートも返す手間が省けた。
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