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第四章・もう抗えない。(2)
先ほどまで上にいた筈だった身体は彼の腕によって抑え付けられ、仰向けに寝そべっている。
意図も簡単に組み敷かれてしまった。
「放せ!」
どうにかしてこの檻から抜け出さねば。
アマデウスは抵抗するものの、手首を固定されて身動きが取れない。手にしていた短刀がからりと小さな音を立てて地に落ちた。
「夜這いか?」
低いくぐもった声と共に静かな息がアマデウスの耳孔に入る。
「誰が!」
力の差は歴然だ。最早自分に勝ち目はない。けれどもここで屈してなるものか。アマデウスは未だ威勢よく振る舞う。
しかしその抵抗も空しく終わる。
抵抗を黙らせたのは彼の力強いその手が動いたからだ。たった片方の腕でアマデウスの両腕を頭上で固定すると、もう片方の手が胸に乗っている蕾のひとつをチュニックの上からなぞるように撫でた。
親指の腹が蕾の形状を確かめるように丁寧に動くからたまらない。
唇は必死に甘い声を上げてしまわないように閉ざすしかない。彼はそんなアマデウスに目を細め、愉しそうに見下ろしている。
布地からではなく、直に触れてほしい。
アマデウスの身体が熱を帯びはじめる。
抵抗さえもできなくなったアマデウスは、官能から自らを遠ざけるために唇を噛みしめる。
懸命に淫魔という性に生きる自分が官能を拒絶する。その姿が面白いのか、アマデウスの身体をなぞる手は腹部を通り、下肢へと向かった。
太腿からそっと陰嚢を包み込まれれば華奢な腰がびくんと跳ねた。
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