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第四章・もう抗えない。(3)
「お前のここはまんざらでもなさそうだが?」
ライオネルの手はさらに自由奔放に動く。
スキニーパンツと下着をかいくぐり、太腿を撫でる。
陰茎はすっかり勃ち上がり、蜜を零している。
華奢な身体が弓なりに反れる。それを合図に亀頭から流れる蜜を指に絡め取ると後孔に沈めていく。
肉壁の中で彼の指が動くたびに卑猥な水音が生まれ出る。
噛み締めた唇から甘い声が弾き出る。
(違う)
(こんなふうに抱かれたくはない)
“おれを求めなさい。そうしてお前はおれなしでは生きられない身体になる“
ベルゼブルの姿が頭を過ぎる。
(ぼくは玩具じゃない)
“ヴァンパイアには淫魔の力が有効らしいわ。兄さんはこのことを知っててアマデウスと情交を交わしたの?“
コルベルの声が頭に響く。
(ぼくはモノじゃない)
(違う)
けれども自分は淫魔だ。性を司り、惑わす存在でしかない。
アマデウスの夢はいつも母だった。自分もいつしかニヴィアのように素敵な人に巡り会いたいと、そう願っていた。
だが、自分はそれさえも許されないほど穢れきっている。
兄を殺害され人間界に降りた時。もうアマデウスの運命は決まっていた。
生きるためとはいえ、人間を誘惑し、誰彼構わず自ら身体を開く。邪な悪魔。
(――ぼくは……)
「やめっ! いやだ……いやだっ!」
心の底からこの行為を拒絶しているのに、自分の意に反して身体が快楽を求める。
陰茎は淫らに蜜を垂れ流し、肉壁は放すまいと指を咥え込む。
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