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第四章・談合。(2)

「グリゴリ教という教団が人間界にあるのですが、何やらその教団がパーシング・サーペントに似た悪魔に液体を飲ませているところを見ました。ベルゼブルは彼らとつるんで凶悪化する薬を作っているようです。これは推測ですが、ベルゼブルはその液体を飲んで兄達よりもずっと強くなったとは考えられないでしょうか」 「――それが真実ならば、人間界は愚か、悪魔界と天界さえも脅かす一大事になるぞ」  ルジャウダは険しい顔つきで我が子アマデウスを見る。 「――アム、貴方は大丈夫だったの? ベルゼブルに何かされたのではなくて?」  ニヴィアのそれはしごくまともな考えだった。  世継ぎである兄が命を奪われたのだ。当然自分の命も狙われる危険性がある。  ――それならばどんなに良かっただろう。  しかし、アマデウスにとってベルゼブルの行動は屈辱以外の何者でもなかった。  母ニヴィアの言葉に、アマデウスはここへきて口を閉ざした。ベルゼブルに陵辱されそうになったことを思い出したのだ。あの人を蔑むようなアーモンド色の目を思い出しただけでも嫌悪感が全身を這う。  あまりの嫌悪感に、アマデウスは膝の上で手を握った。  何もかもをさらけ出し、身体を暴かれ、意図も容易く組み敷かれた愚かな自分は兄を殺した相手に――危うく身体を開きそうになった。  ――兄の仇を討てず、身体を開いてしまった自分が悔しい。  ――誰彼かまわず精液を欲する淫魔である自分が悲しい。 (判っている。母上はぼくを心配してくれた上での言葉だ)  彼女を責めるのは道理じゃない。

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