133 / 209

第五章・アマデウスの決意。(1)

 (一)  翌日、早朝。アマデウスは心地好い中で目を覚ました。力強い腕が自分を包んでいる。今まで、こんなに安らかな気持ちで目覚めたことがあっただろうか。視線を上げると、そこにはとてもハンサムな男性の顔がある。今は閉じているが長い睫毛に覆われた目は冴え渡ったブルームーン。アマデウスは彼の目が大好きだった。  ――いや、それだけではない。頑固そうな鷲鼻も、その下にある薄い唇も。この広い胸板だって……。  アマデウスは広い胸板に頬を寄せ、自らの唇で彼の剥き出しになっている肌をなぞる。しっとりとした肌触りが心地好い。エキゾチックな気分にさせられる。背筋がぞくぞくするのはけっして恐怖からではない。彼を欲しているからだ。  アマデウスがしばらく彼の肌触りを楽しんでいると、静かな呻り声が耳に届いた。その声はくぐもっていて、どこか辛そうだ。彼の引き締まったスキニーパンツへと視線を滑らせれば、彼の欲望は布地を押し上げ、すっかり大きく成長している。  ――ああ、そうだ。彼は昨夜自分を抱かなかった。  アマデウスは食事の為なら自分が誰彼構わず身体を開く淫魔(インキュバス)であることを嫌悪し、涙を流した。その姿を見たライオネルは優しく宥め、抱かないと宣言した。そうやって自分を腕の中に閉じ込めたのだ。

ともだちにシェアしよう!