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第五章・消えた彼女。(2)
(――さて、これからどうするか、だ)
アマデウスは目の前に広がる巨大な建設中の建物に目を凝らす。どうやらアマデウスが毛嫌いしている彼はここに広大な教会を造ろうとしているのだろう。門はまだ完成してはいない。まるで入れと言わんばかりにぽっかりと開いた入口が見える。先を進めば蛇の胴体のように長い回廊で繋がっていた。
構わずさらに奥へ進むと、ここが中心部だろう。白一色で出来た聖堂が見えた。大広間を支える太い柱が幾本も立ち並ぶ。中は外同様、白で塗られていた。
ここもやはりまだ建設途中のようだ。左右の大きな窓にはステンド硝子はなく、木の枠組みのみが施されている。ぽっかりと開いた穴から外の景色が覗いている。――いや、穴は何も左右だけではない。頭上も、だ。
見上げれば、眩いばかりの太陽光が天井からも降り注ぐ。
この光景を見たアマデウスは、ライオネルが来なくて良かったと心底思った。
なにせ彼は太陽に嫌われている。この陽光を浴びればたちまち灰と化してしまうだろう。
彼の妹コルベルの話が真実ならば、太陽の下を歩くには淫魔の力が必須である。そして昨夜、アマデウスの気持ちを優先にした彼は自分を抱かなかった。これがどういうことを示すのかは結果がすぐに見て取れる。アマデウスを利用しなかった彼は太陽の劫火に焼かれ、消滅するのだ。
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