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第五章・消えた彼女。(6)

(違う。こんなのは望んでいない)  それなのに、アマデウスの陰茎も熱を持ち、勃起している。それどころか蜜まで流す始末だ。 (嫌だ!)  アマデウスは心の底からベルゼブルに抱かれることを嫌悪している。それなのに、淫らな身体は快楽に従順だ。唇から甘い嬌声が漏れる。ベルゼブルの拘束はもう既に消えているのにそれでもアマデウスはその場に蹲って肉棒を咥え続ける。 「良い子だ、初めからそう素直になっていればよかったものを――」  彼は悦に満ちたその声で(なじ)る。アマデウスを両手で華奢な腰を持ち上げると勢いよく前後に動かした。ベルゼブルの肉棒が最奥まで突き刺さる。アマデウスは与えられた肉棒に嬌声を上げ、弓なりに身体を反らす。そうするとさらに後孔を穿つベルゼブルの肉棒が感じられた。彼がアマデウスの肉壁を押し上げているのが判る。反り上がった自身が蜜を零し、ぽたぽたと床を濡らす。 「お前はぼくのものだ! ほらこんなに求めているじゃないか、なあ、アマデウス!」  頭上からベルゼブルの醜い笑い声が聞こえる。 (嫌だ! ぼくが欲しいのはこんな強欲な悪魔じゃない……) 「ライ、オ、ネル……」  アマデウスが求めるのはただひとり。何者にも屈しない強固な意志。冴え渡る澄んだブルームーンの目。大丈夫だと囁きかけてくれる優しい男性――ライオネル・フォンテーンだけだ。  しかしその彼はいない。  唇は閉ざすことができず、嗚咽と嬌声が入り交じった声で鳴く。

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