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第五章・悲痛な叫び。(4)
焦点さえも定まらないその目を凝らせば、そこはまだ建設途中にある教会のようだ。グリゴリ教の新たな活動地とでもいうのだろうか。門構えはまだ完成しておらず、中の教会が丸見えだ。しかも教会の扉もまだ立て掛けられていない。ぱっくりと開いた、まるで洞穴のようだ。
引き続き、ライオネルが周囲に警戒しながらも歩を進めると、視界が広がる。すっかり暗闇に慣れているブルームーンの目が眩んだ。
ライオネルは建物の中に入ればいくらかは太陽から逃れられるとも思っていたが、それはまるで違っていた。自分がいるここが教会の中層部だろう。左右前後の四方八方に窓が固定されてある。太陽が燦々と降り注ぐ、今までに見たことのないずば抜けて広い会堂だった。しかも窓にはまだ木枠しかなく、ステンドグラスさえも張られていない。しかもご丁寧に天井も、である。ぱっくりと大きく開いた天井から太陽の力強い日差しが燦々と降り注いでいる。
……息苦しい。コルベルから受け取ったフード付きの分厚いコートを羽織っていても、肌がひりつく。今にも皮膚が焼けてしまいそうだ。ライオネルがこうして立っているだけでも意識が途切れそうになる。
一刻も早くここから逃げなければと本能がいう。
しかし、たしかにこの会堂から惑的する強い香りがするのだ。彼を見つけるまでは帰ることはできない。
ライオネルは朦朧とする意識の中で目を凝らす。――するとなんということだろう。アマデウスが長身の男に組み敷かれているではないか。彼は一糸も纏わないしなやかな素肌を晒し、一身に男の肉棒を受け入れていた。
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