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第五章・敵対。(3)
「そうだ。アマデウス、君にいいことを教えてやろう」
ベルゼブルの薄い唇が醜く歪む。
視線はライオネルに向けたまま、醜く口元を歪めて――。
「この世界における悪魔の凶悪化――あれはおれが仕組んだことだ。この世界のグリゴリ教団と結託してな。お伽噺を聞かせてやろう。むかしむかし、あるところに、王子がいました。王子は美しい王族の悪魔に恋をしました。しかしその悪魔には三人の兄がいます。その兄達は王子を嫌い、美しい悪魔を守り抜こうとします。王子は美しい悪魔がどうしても欲しくてたまりません。そして彼は、三人の邪魔な兄達を殺そうと思いついたのです。王子はとても強かった。三人の兄達は手出しが出来ず、死んでいきます。そんなある日、心優しい王子はふと思いつきました。そんなに美しい悪魔が欲しいのなら、自分の血肉になって生き続ければいいと――。そして王子は三人の血をすべて飲み干します。するとどうでしょう。王子の身体からみるみる力が漲り、肌は瑞々しくなっていくではありませんか! これならば、自分の王国もさらに強固にできる。王子は思いました。すべての世界をひとつにまとめ上げ、悪魔の世界を作ってやろうと……」
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