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最終章・Isaac (2)
そういえば、夢の中で彼が何度も呼びかけてくれていたような気もする。
そして、ベルゼブルと対峙した時も――アマデウスは必死に太陽光から自分を守ろうと身を挺してくれていた。他人に弱みを見せることが大嫌いな彼が泣きじゃくり、ライオネルを助けてと許しを乞うてくれた。
あの、誰よりもプライドが高く、誰よりも強気な彼が――である。彼は王族に生まれたからだろう。自分以外の何者にも支配されることをことごとく拒絶し、すべて自分の思い通りにならないと気が済まない気位の高い悪魔だ。それなのに――アマデウスは彼自身にとって、他人 に支配されるということをやってのけたのだ。涙を流し苦痛に視界を歪めて……。
彼はどれほどの屈辱だっただろうか。
(ああ、アマデウス。おれの天使ーー)
アマデウスがベルゼブルや自分に抱かれた時、いったいどんなに苦しかっただろう。胸の内を思えば思うほど、ライオネルの胸が熱く震える。
ライオネルはアマデウスを愛しているのだと理解した。
これが愛ならばアマデウスがこの腕の中から消えてしまった時のあの焦燥感も喪失感もすべて意味が通じる。いつの間にか、自分はこの悪魔に心を奪われていたのだ。
耳に残るのは、瀕死だった時にほんの僅かに聞こえたあの悲痛な叫び声だ。
"肉奴隷" ベルゼブルの心ない言葉の数々がアマデウスを絶望の淵へと追い詰めた。アマデウスを侮辱したあの男にはどんなに殴っても殴り足りないくらいだ。
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