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最終章・Isaac (3)

 思い出すだけでも反吐が出る。ライオネルが怒りの渦に巻き込まれていると、悩ましげな声が聞こえて我に返った。 「アマデウス? マイスイートハート」  果たしてこの声音は本当に自分のものだろうか。ライオネル自身、驚きを隠せない。思っていたよりもずっと優しい声音だったからだ。手を伸ばし、そよ風に弄ばれている彼の細やかな絹の髪にそっと触れる。  突然、アマデウスが飛び起きた。その顔は蒼白している。しかしライオネルの顔を見るなり、ほんの少しだが顔に赤みが差した。彼はライオネルを見たまま動かない。赤い目(ルビー・アイ)を大きく見開いたかと思えば何度も瞬きを繰り返してみせた。 「ライオネル? 貴方なの? 怪我はもう平気? 痛むところはない?」  何度も瞬きを繰り返し、ライオネルの身体をくまなく見回す。あたふたするその仕草がなんとも可愛らしい。 「君は平気か?」  ライオネルがそう言ったのは、この華奢な身体を夜通し抱いたに違いないからだ。  尋ねると、途端にアマデウスの頬が赤くなった。それから彼は何やらぼそりと呟き、俯いてしまう。百面相をする顔をもっと見ていたいと思っていたライオネルは残念な気持ちでいっぱいだった。 「アマデウス?」  果たしていったい彼は何と言ったのだろうか。アマデウスの表情を確認するため顔色を窺う。俯くその顔を覗き込めば、彼はますます頬を朱に染めているではないか。 「貴方が、無事ならそれでいい」

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