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最終章・彼の真意。(2)

 彼女は何を言っているのだろう。もしそれが本当なら自分はこんなに泣いていないし、第一この部屋に自分はいない。彼の傍から一時も離れないだろうに――。 「そんなことはない」  アマデウスが力なく首を横に振れば、彼女は尚も食い下がる。そして話しを続けた。 「あるわよ。だって聞いてよ。淫魔の力は兄さんに有効だって話した時があったんだけどね? あ、別に貴方を悪く言うつもりはなかったの。ただ兄さんに淫魔についての特効薬の話をしただけでね?」  彼女は頬を膨らませ、説明するものの、途中でアマデウスが淫魔だということを思い出したのか、アマデウスへ釈明を始める。正直、今のアマデウスにとって自分への謝罪なんてそんな事はどうでも良かった。彼は果たして自分のことをどういうふうに思っているのか、続きが気になって仕方がない。アマデウスは逸る気持ちを抑えて辛抱強く彼女の言葉を待った。 「そしたらね、兄さんったら『馬鹿なことは二度と言うんじゃない』って怒ったのよ?」  彼女は突然低い声を出し、眉間に皺をつくってライオネルの真似をした。コルベルの言葉に自分の耳を疑った。聞き返すと、彼女はにっこり微笑んでみせる。落ち込んでいるアマデウスを元気付けようとしてくれているのだ。兄のライオネルといい、妹のコルベルといい、この兄妹はとても心優しい。そして彼女は尚も続けた。

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