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最終章・王の涙。(4)
コルベルが告げた彼の名を聞いた瞬間、ライオネルは口ごもった。アマデウスと離れると考えただけでも胸が張り裂けそうに痛む。彼と離れたくないと肉体と心が叫ぶのだ。
コルベルはまるで幼子に諭すように、「いいわね?」ともう一度ライオネルに念を押すと返事を待たず去っていく。なんということだろう。コルベルはいつの間にか母親気取りだ。彼女自身がライオネルよりもずっと大人で主導権を握っていると思っている。ライオネルは宙を仰ぎ、小さく呻いた。
――ここは薔薇園だ。閉鎖的な空間ではなく、とにかく解放された気分になりたかった。薄桃色の薔薇が咲き誇っている。重力に逆らえなくなったライオネルは、側にあったベンチに腰を下ろした。するとひとつの影が目の端に写った。アマデウスだ。
彼はライオネルに何も話しかけることもなく、側に来ようともしない。ただベンチに座るライオネルを見つめていた。
ライオネルが手招きをすると、アマデウスはおずおずと歩み寄る。そのまま構わず彼の手を取り、華奢な身体を引き寄せた。
アマデウスは今やライオネルの腕の中にすっぽりと収まっている。彼が自分の腕にいるこれこそが正しいことだ。そう思えるから不思議だ。
「ここは母上のお気に入りの庭なんだ。――いや、ぼくや兄達もここが大好きで、幼い頃なんてよく駆け回って遊んでいた……」
「君の兄上のことを教えてくれないか?」
アマデウスは驚きに満ちた目でこちらを見上げた。
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