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最終章・王の涙。(6)
ライオネルはアマデウスが三人の王子と駆け回る姿を想像して胸が熱くなった。
永遠に続くと思っていたアマデウスと三人の兄達の平和な日常はベルゼブルによって壊されたのだ。そして奴らはそれでも飽きたらず、さらに壊し続ける。
なんとしてでもこの戦いは終止符を打たねばならない。それが亡き王子達の供養にもなるだろう。ライオネルは奥歯を噛み締め、アザゼル教皇を葬り去ることを改めて決意した。
「ライオネルのご家族はどうなんだ?」
次はアマデウスが尋ねる番だった。ライオネルは過去のことは言いたくなかったが、アマデウスは話してくれた。今度は自分の番だと言い聞かせ、口を開いた。
「母はおれとコルベルが思春期を迎える頃、疫病にかかって亡くなった」
「……それは気の毒に」
アマデウスの手がライオネルの手の甲をそっと包み込む。
ライオネルは小さく微笑みかけると話しを続けた。
「母が亡くなってからだ。父は寂しさのあまり酒に溺れ、女に夢中になった。そして活力吸血鬼 の女と出会ったんだ。父はすぐに女の虜になり、自らすすんでヴァンパイアになった。そしておれを――こんな化け物へと変えたんだ。それだけじゃない! コルベルさえも奴の配下に加えようとした!!」
今思い出すだけでも腹立たしい。父親とはああも身勝手な存在だと思うと実に嘆かわしい限りだ。
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