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最終章・王の涙。(7)

 しかし、こうしてコルベルと再会を果たせたのはこの美しい王子が保護してくれていたからだ。化け物へと姿を変えられはしたが、おかげで彼と出会えた。当時こそ父親の身勝手な振る舞いに嫌気が差したが、今は全部が全部悪い方向に向いていないと思える。それはひとえに愛おしいアマデウスがいてくれたからこそだ。 「アマデウス、君には何度礼を言っても言い足りない。妹を匿ってくれて本当に感謝しているんだ」 「ライオネル、ぼくも貴方の力になれてよかった」  赤いその目には今や薔薇園にはない。ただ一心にライオネルを見つめていた。 「明日、おれは人間界に戻る。アザゼルが動き出したそうだ。王は悪魔界を統括する者として均衡が崩れてしまうために人間界には手出しができないと仰せだ」  ライオネルはアマデウスを抱きしめたまま、そっと囁いた。 「ぼくは……貴方に死んで欲しくない」  アマデウスの細い両腕が腰に回った。柔らかな頬を胸に寄せる。  死なないでと囁く悲痛な声がライオネルの胸を痛める。愛おしいアマデウスとの別れは苦しい。しかしこのまま奴を放って置けば世界の大惨事になり、まかり間違えばこの可愛いアマデウスに再び危険が迫るかもしれない。  あの貪欲な教皇の目はアマデウスをしっかり捉えて放さなかった。ベルゼブルの時のように組み敷かれでもしたら――彼の身に危険が及ぶと思うだけでも胸の苦しさは増す。ならばアザゼルがこれ以上凶悪化する前に止めなければならない。 「しかしこのまま奴を野放しにはしておけない」

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