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最終章・決戦前夜。(2)

 彼の抱擁はとても優しく、甘いものだった。  下肢を広げられれば、すぐに骨張った手が伸びてきて陰嚢を包み込んだ。なんという甘い快楽。身体が跳ねるそのたびにベッドのスプリングが軋みを上げた。アマデウスは声を上げ、この行為をさらに強請った。反り上がった陰茎は蜜を放っているのだろう。蜜を受けた彼のその手で陰嚢を扱かれるたびに卑猥な水音が聞こえてくる。  その間にも、薄い唇はふくらはぎを通り、爪先へと進むと足の指にそれぞれ落ちていく。リップ音が鳴ったかと思えばまた次の指へ、次から次へと繰り出されるキスの愛撫がたまらなく心地良い。 (こんな感覚、はじめてだ……)  アマデウスはこれまで何十人何百人もの男に抱かれ続けた。けれどもこれほどじれったくも甘く、心が満たされた抱かれ方には経験がない。身体だけではなく心も喜びに震える。その喜びは扱かれている陰嚢へ刺激され、陰茎はさらに蜜を零す。蜜を含んだ彼の指が動くたび、水音が弾かれていく。  薄い唇は右足への愛撫が終われば今度は左へと移る。全身をくまなく愛されるアマデウスの心はもう蕩けてしまいそうだ。ライオネルしか見えない。 「ライオネル、貴方を愛してる……」  アマデウスが震える声でそっと伝えると、ライオネルは野獣のような雄叫びを上げると強靱な肉体に纏った布のすべてを拭い去った。  なんと力強い肉体だろう。太腿の間にある肉棒は赤黒く染まり、血管が見える。アマデウスを貫きたいと彼の欲望が告げている。アマデウスは口内に溜まっていた唾をごくりと飲み込んだ。

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