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最終章・小さな命。(2)
生まれ出た悲しい答えにアマデウスは首を振る。しかし現実にはライオネルがいない。これは紛れもない事実だ。
「どう、して……。ライオネル。愛してくれたんじゃなかったのか……?」
息を吸い込めばムスクの香りが鼻の奥に残っている。けれど力強いあの腕も、分厚い胸板も、広い肩も――冴え渡るブルームーンの目も今はない。
彼は自分の元から去ってしまったのだ。
(ああ、そんな……)
アマデウスは彼のぬくもりが残るシーツを掻き抱き、泣きじゃくった。
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大広間の最奥にある部屋――ここはニヴィアがお気に入りの小広間だ。あれからどれくらい泣いただろう。依然としてライオネルの姿はここにはない。悪魔城から彼の気配も消えている。
アマデウスの涙はすっかり涸れている。ふと見下ろせばニヴィアお気に入りの薔薇園が見えた。あんなに美しいと思っていた薄桃色の薔薇たちが、今朝は色褪せて見えるから不思議だ。心に深い悲しみを負ったアマデウスを癒してくれるものは何もない。
一度は想いが通じたと思っていた愛する男性 に捨てられた。その深い悲しみがアマデウスを絶望の淵へと追い込んでいく……。
アマデウスは絶望に暮れ、じっと薔薇園を見下ろしていた。すると、すぐ隣にニヴィアが腰掛けた。
彼女は手を翳し、アマデウスの体調を確認する。そしてそっと口を開いた。
「アム、貴方……身籠もったのね」
「え?」
「貴方のお腹の中に新しい小さな命が宿っているわ」
自分の体内に新しい命が――。
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