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最終章・小さな命。(3)

「それは、ライオネルの――」  ニヴィアが大きく頷けば、同時に視界が大きく歪んだ。 (ライオネル!)  会いたい。彼が自分のことをどう思うかなんてどうでもいい。とにかくライオネルに会いたい。会ってこの腕で彼の逞しい身体に縋りつきたい。彼の熱をもう一度感じたい。 「母上、ぼくはライオネルのところに行きたい」  ニヴィアの手に触れる。 「行きなさい。きっと力になれるわ。子を持つ母親は誰よりもずっと強いもの。そして三人で無事に帰ってきてちょうだい」  ニヴィアもまた、アマデウスの手を握り返した。  自分にはやはり彼しかいない。  アマデウスはライオネルを追いかける決意をし、立ち上がった。そこに迷いはない。あるのはただ、彼を愛しているという事実だけだ。

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