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最終章・対決。(2)
自分ではない誰かに奪われることを想像しただけでもライオネルの胸が引き裂かれそうに痛む。けれどもライオネルは知っていた。この戦いで生き残れる術は一〇〇万分の一の確立もないことを――。
――時期に彼はライオネルがいたことも忘れるだろう。それでいい。それこそが、彼が幸せになる道なのだ。
ライオネルは深々と被っていたフードを取り除き、数多くの家々が立ち並ぶ中で一際目立つ大きな教会の屋根に飛び移る。そして大声で語る男に集中した。
「皆の者、悪魔は我に従った! もう何も恐れるものはない! この悪魔達と共に世界に我が教団の名を轟かせようぞ」
グリゴリ教、アザゼル教皇は二階のアーチから姿を見せると両手を掲げ、集う人々にそう言った。彼の周りには同じように白の祭服を着た人間達が賛同している。いや、彼らだけではない。悪魔達もまた会堂から姿を現し、教皇に命じられるまま静かに敬礼している。彼らのおぞましい形態は様々だ。山羊の角を持つ者、蟻のような姿をする者。赤ん坊の身体に羽根を生やした者などがいる。その悪魔に共通するのは皆、鋭い刃を所持しているという点だ。
「アレを見よ!」
突然教皇は声を荒げると彼らより遙か頭上の教会の屋根にいるライオネルの方を指さした。ガーゴイルの翼を持つ悪魔がこちらへ向かって飛んでくる。
「あの者はこの世界を混沌へと導く悪魔の使いのヴァンパイアだ! 殺してしまえ!」
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