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最終章・対決。(4)
確かに手応えはあった。しかし教皇の身体を真っ二つにはできなかった。それは教皇が魔力を解放したからだ。唸り声はやがて野獣が吠えるようなおぞましい声に変化し、肉体は膨らみ筋肉質になっていく。あまりにも巨大になっていく身体は、グリゴリの証しである白い衣を破いていく。やがて目の前に現れたのは人の形をしてはいなかった。大きな身体はまるで犀のようだ。巨大な身体から伸びた四肢は太くずっしりとしている。頭部には七つの蛇の顔があり、背には四つの漆黒の羽根が生えている。
人間の形態とはかけ離れたアザゼル教皇の姿を見た民衆達は恐怖した。皆それぞれが悲鳴を上げ、逃げ惑う。教皇のこの姿こそがアマデウスの三人の兄の血を宿したベルゼブルを食った教皇の成れの果てだった。教皇の体中にはアドレナリンが駆け回っているのだろう。目は血走り、七つある蛇の口からは涎が垂れている。
教皇の変わりように宣教師達も恐れおののく。しかしこれこそが彼の狙いだったのかもしれないとライオネルは思った。恐れや怒りといった負の感情は悪魔の餌になる。しまったとライオネルが思った時にはもう既に遅かった。七つある蛇はあっという間に宣教師達を食らい尽くした。人々は逃げ惑うものの、悪魔によって取り押さえられ、食われていく。
負の感情を食らった教皇はますます力を溜め込んでいった。ライオネルの背後から、腹を満たした悪魔が狙い撃つ。ライオネルはひとつ舌打ちすると地を蹴った。
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