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最終章・対決。(5)

 悪魔には目も暮れず、定位置にある蛇の頭に集中する。二対あったリボルバーのひとつを腰のホルダーに戻し、片手にのみリボルバーを持つと、全エネルギーを集中してトリガーを引く。蛇のひとつに見事命中させた。しかしまだ倒れない。頑丈な頭はうねり、ライオネル目掛けて途中にいた悪魔数体を食らいながら突っ込んでくる。アドレナリンが増幅しているアザゼルには、もう敵と味方の判断さえもできないようだ。ライオネルは背にあった大剣を構え、蛇の頭上から切っ先を突き刺した。そのまま一気に横へ凪ぐ。蛇は耳を劈く声を上げ、霧散する。  やっとのことで一匹の頭を倒せたと思えば、また別の頭がライオネルを襲う。恐ろしいスピードだ。ライオネルの両肩が鋭い牙の餌食になった。強烈な痛みが彼を襲う。それでもライオネルは歯を食いしばり、もう一方の手でリボルバーを構えると銃弾をお見舞いする。体内から見事に撃ち抜いた。  残り六つだ。しかしすでにライオネルの意識は消えかけていた。牙には毒があったらしい。食いしばった歯の奥から赤い鮮血が押し上げてくる。ライオネルは血を吐いた。  意識が朦朧とする中、それでもここで倒れるわけにはいかないとライオネルは自分を奮い立たせる。これを見逃せばアマデウスに危険が及ぶのは目に見えていた。せめて相打ちでもいい。この強欲な教皇さえ滅び去ってくれるのであれば、自分の命など容易く捨て去ることができる。なにせ自分はヴァンパイアに変化したその頃にはすでに死を迎えているのだから――

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