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最終章・対決。(6)
化け物に成り果てた自分をアマデウスが色鮮やかな世界へと変えてくれた。彼がライオネルの眠っていた母性を目覚めさせ、愛することの尊さを教えてくれた。アマデウスさえ無事ならば何も望まない。その一心がライオネルを突き動かす。ライオネルの体内に廻る真っ赤な血液はこうしている今も口の両端から流れ続ける。両足はまるで鉛のようだ。動く気力さえも奪ってくる。しかしそれでも――。
左と右から、二体の蛇が狙う。
ライオネルは血を乱暴に腕で拭うと左右から向かい来る蛇の頭に意識を向けた。右の頭の方がほんの少し早かった。ライオネルは踵にあった隠しナイフで蛇の片目を素早く蹴り上げた。蛇の目がひとつ潰れたことにより、平衡感覚が鈍る。それを利用して地を蹴り上げれば、勢いよく向かい来る左の蛇の牙の餌食と化した。そしてライオネルはグリップを握り、振り下ろす。一体の蛇を手にかけると同時に横へ凪いで二体目も撃破する。
ライオネルは乱れた呼吸を繰り返し、地に膝を着けた。最早立っていることさえもできないほど、体内に廻る毒がライオネルを蝕み、彼を死へと誘っているのだ。
「調子に乗るな!」教皇は激怒する。悪魔達を飲み込み、犀の足でライオネルの身体を踏みつけた。全体重がライオネルの肉体の一点ににのし掛かる。地面諸とも打ち砕いていく。
ライオネルの目は焦点が合っていない。肋骨が軋みを上げ、へし折れていくのが判る。ライオネルは巨大な足に踏みつけられ、虫の息に近かった。
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