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最終章・決着。(2)
鋭い牙を持つ蛇の頭がアマデウスを食い千切ろうと大口を開けて向かい来る。アマデウスは天に向かって大きく跳び、蛇の頭を踏み台にするとさらに高く跳んだ。見えたのは巨大な胴体だ。アマデウスはグリップを握り、さらにやって来た別の頭部を踏み台にして前へ飛ぶ。するとライオネルもアマデウスに気が付いたのだろう。視線が重なる。彼はアマデウスの姿を見るなり両腕を伸ばして犀の足を押さえ込み、抵抗を始めた。
重いその巨体が持ち上がる。いったいライオネルのどこにそんな力が残っているのだろうか。彼の肉体は限界を迎えていた。それでも自分の姿を見るなり抵抗を示したのは、少なくとも彼も少しは自分を愛してくれているからだと自惚れていいだろうか。
赤い目 に涙が滲む。しかしこんなところで泣いている暇はない。今は一刻も早くアザゼルを滅ぼさねばそれこそライオネルが死んでしまう。アマデウスは滲み出る涙を乱暴に片腕で拭い去ると、目前に迫る巨体を捉えた。
巨体が傾く。背後からは蛇の頭が鋭い牙で仕留めようとアマデウスに向かい来る。
(だめだ! やられる!!)
アマデウスは深手を負うことを覚悟した。――その時だ。背後からライオネルの気配がした。彼はジャマダハルを手にこちらへ跳び、アマデウスを庇った。鋭い牙がライオネルの胴を突き刺す。そしてそのまま地面に向かって突き進む。蛇は彼を咥えたまま、地面に叩き付けた。硬い石畳が破壊される大きな音がする。砂埃が舞い、全体の視界を覆う。
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