195 / 209
最終章・決着。(3)
(ライオネル!)
彼が死んでしまう。アマデウスは怒りに震えた。たとえ視界が砂埃に覆われようともそこに巨体があるのに変わりはない。あれほどの大きな肉体が俊敏に動ける筈もないのだ。
アマデウスは地の底から這い上がるような唸り声を上げ、大剣を握るグリップに力を加える。
「お前さえ……お前さえいなければっ!!」
アマデウスはアザゼルの胴体を打ち砕こうと力を振り絞った。
「無駄だ、儂の鎧はお前一人では到底敵わんじゃろうて」
(ぼくの体内には新たな命が宿っている!)
「ひとりじゃない!」
自分一人ではないと思えばアマデウスは何でも出来る気がした。愛おしい男性をなんとしてでも救い出す。そして親子三人で共に悪魔城へ帰還するのだ。
アマデウスが吼えた矢先だ。下腹部が熱を帯び、金色に光りはじめた。瞬く間にアマデウスの全身が金色の光に包まれたではないか。剣を握るのはアマデウスだけではない。
腰まである波打つブロンドの男性と襟足までのダークブロンドの男性、それから色白の肌に翡翠の目をした彼もまた、共にグリップを握っている。
(……ああ、貴方達は――)
アマデウスが力いっぱい切っ先を振り切れば、胴体を裂く手応えを感じた。
何かが破裂する大きな音と共に砂煙が舞う。
いや、周囲に轟くのはそれだけではない。耳を劈く耳障りな悲鳴も、だ。瞬間、おそろしいほどの爆風が周囲を襲う。手から大剣が抜け落ちる。アマデウスは吹き飛ばされるようにして身体が宙に浮いた。そのまま後方へと弾き飛ばされる。
肉体が建造物の瓦礫にぶち当たる。激痛に襲われ、意識が途絶えた。意識下では巨体が崩れ落ちる音が聞こえた気がした。
ともだちにシェアしよう!