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最終章・白昼夢。(2)
どうやら自分は長い夢を見ていたらしい。そっと身体を起こせば、痛みは消え失せている。
そして目に入ったのはライオネルに寄りそう一糸も纏わない美しい彼の肢体だ。
また、ライオネルは自分の体力を回復させるためにマデウスを抱いたらしい。
そこで思い出したのはおぞましい戦いの光景だ。グリゴリ教アザゼル教皇が巨大な七つの蛇の頭を持つ悪魔へと姿を変えた時の記憶。鋭い牙がライオネルの肉体に噛み付いた。身体中に毒を受け、今度こそ死を覚悟をした。
しかし今はどうだろう。
(おれは、生きているのか――)
ライオネルは、この現実が真実であるかどうなのかを確認するため手を伸ばし、すぐ目の前にある滑らかな頬を包み込む。赤い唇を親指の腹でそっとなぞれば、甘い声が弾かれた。彼の頬は朱に染まり、恥じらうように目を伏せる。長い睫毛が目尻に斜の陰を落としている。なんとも美しい姿だろう。
目の前にいる美しい天使が死した自分を迎えに来たのだとも思ったのだが、どうも違うらしい。
「おはよう、マイラブ」
ライオネルは華奢な腰に腕を回した。
そのとたん、思い出したのは先ほどの夢だ。真っ白な空間の中を駆け回る三人の少年達。それが妙に現実味を帯びている気がしてアマデウスの腹部を見下ろした。そしてあいた方の手の甲で、まだ平たい腹部をそっと撫でる。
「まさかとは思うが、君とおれの間に子供ができたのか?」
尋ねた瞬間、アマデウスの頬が薔薇色に染まった。
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