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最終章・夜明け。(5)

「は?」 「ねぇ、ライオネル。ぼくからだけじゃなくてみんなからも逃げられないな」  アマデウスが面白そうにくすくすと笑う。なんとも心地好い笑い声だろう。アマデウスの笑い声はいつだってライオネルは幸福感にひたらせてくれる。  さて、この王と王妃はアマデウスの腹に宿った子が三人だと知ればいったいどんな顔をするだろうか。――いや、それだけではない。この子供達の正体を知ればどれほど驚愕するだろう。  それもそれで悪くはない。 「とても楽しい日々が始まりそうだ」  ライオネルはブルームーンの目をぐるりと回し、そう言った。そんな彼に、一同はいっそうの一際明るい声で笑った。  .  .  .   アマデウスは今、ライオネルとポーチに出ている。  目を閉ざせば、愛おしい彼のぬくもりと、新たな三つの命を感じた。 「ねぇ、ライオネル。やがてぼくたちの三人の王子はとても腕白な子供に育つね。そして大好きな薔薇園を駆け回って、遊ぶんだ」 「ああ」  ライオネルはアマデウスをそっと引き寄せ、頭のてっぺんに唇を落とした。  アマデウスは、この大広間でライオネルの膝の上に座った三人の王子達が楽しそうに声を上げて笑う姿を思い浮かべていた。 (きっと素敵な家族になる)  それは決意ではなく、核心に近いものだった。  ――最終章・完――

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