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epilog(2)
ライオネルが向こうの方で手招きする。するとダグラスの悲しみに染まった頬が一気にリンゴ色へ変化した。擦り傷を負ったことも最早気にしていない。彼は小さな足で力強く地を蹴り、大好きな男性へと駆け寄った。
力強い二本の腕がダグラスを抱き上げる。ギデオンとグスタフはずるいと口々に抗議している。するとライオネルはギデオンを肩に乗せ、グスタフをもう一方の腕で抱き上げた。
三人の王子たちは皆が頬をリンゴ色に染めて笑っている。そして彼もまた――。薄い唇を大きく開き、その低い声で笑っていた。
いったいこんな未来を誰が想像し得ただろうか。三人の兄達が心ない悪魔に殺された時、絶望しかなかった。けれどもあの逞しい騎士に出会って世界が一変した。色褪せた世界が色鮮やかな世界へと変化したのだ。
目頭が熱い。胸から熱いものが込み上げて赤い目 へと押し寄せる。
口を大きく開けて笑うライオネルと視線が重なる。アマデウスはその目に浮かんだ涙を静かに拭うと愛おしい四人がいる場所へ歩み寄った。
「今日の謁見は終わり?」
愛おしい彼がすぐ側にいるというだけでアマデウスは嬉しくてたまらない。口元は勝手に笑みをつくり、くすくすと声を上げてしまう。そんなアマデウスの問いに、彼は笑うのを止めて唇をへの字にした。
「逃げてきた」
目をぐるりと回してそう告げる。
だったらと、ギデオンは紅葉の手を上げて提案する。
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