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第30話 苦手なコト ※
「……亜樹、ダメだって言ったよな」
亜樹の前に差し出された和真の指先が、白濁の滑《ぬめ》りで汚れていた。
「ご、ごめん……な、さ…ぃ……」
できの悪いペットだと思われただろうか。不安に亜樹の喉がキュッと締まり、謝罪の言葉がみっともなく掠れた。
粗相の証拠を無くしてしまいたくて、亜樹がその指に舌を懸命に伸ばしてくる。
指の根元から爪先まで、拭い取るように何度も舌を這わしていけば。
「ふぁっあっ!」
舌を捕らえた指がそのまま口腔内に潜り込んだ。
「ほら、舐めろ」
その言葉に従って、深く挿し込まれた指へも必死に舌を絡めていく。
「ふぅぁ、っうぁ!うぅ…ぁぅっ!」
それでも濡れた茎を擦られれば、喉の奥を刺激されて、苦しさに嘔吐《えず》きながらも自然と腰が揺れてしまっていた。
「反省する気がないのか、こんなに零して」
その状態で敏感な先端に爪を立てられれば、腰が動いて滴が再びコポッと溢れた。
「ひ、ひゃぅっ!ひゃぅ…!」
違う、と。ちゃんと反省している、と。否定したいのに。
指を咥えさせられたままでは、上手く音にはならなかった。
懇願する事さえできないまま、滴を咎めるような和真の指に、先端の粘膜を弄られる。
「ッひ、ひゃぁぁっ───!!」
敏感な粘膜を弄われる刺激は、剥き出しの神経を熱で炙られているようだった。
その刺激にもう一度、亜樹の身体が弓形に反った。
二度目の吐精に亜樹の目からボロボロと涙が零れていく。
「これから、ビーズをいれるのに、これじゃあ保たないだろ」
強すぎる快感で翻弄しているのは和真なのに、でもペットの亜樹にはそんな事は言えなくて。
はぁ、と吐かれた溜息に肩をビクッと震わせた。
「……ご、めん…が、ん…ばる…か、ら……」
「もう、いい」
見捨てられた恐怖に亜樹が身体をどうにか起こし、和真の方を振り返る。
「これを使ってイケないようにしておくか」
そんな亜樹の目の前に差し出された銀色の棒。
それを認めた亜樹の顔が強張っていく。
見捨てられたわけじゃない事を単純に喜ぶには、差し出された物がモノだった。
本来入れる場所ではない隘路《あいろ》へ物を挿し込まれる刺激は、何度されても慣れきれずに亜樹をひどく追い詰める。
「やっ…かず、ま……おれ、ほんと……に…がん…ばる、から……」
縋るように和真へ言いながらも、視線はその道具へ向いたままだった。
目を離す事さえできないほど、鈍く光るステンレス製のその棒は、亜樹の不安を駆り立てた。
「それなら、がんばってコレを入れろ」
亜樹の怯えを正確に感じ取っているはずなのに、手加減をしてくれるような素振りは全くなかった。
拾い上げた亜樹の掌へ素っ気なくブジーを乗せてくる。
「ほら、自分で入れろ」
その言葉に絶望的な表情を浮かべた亜樹がイヤイヤと首を振った。
「せめ、て…かず、まが…やって……」
「それだと仕置きにならないだろ。ちゃんと自分で入れろ」
ひどく苦手な道具なのに。
それを自分の手で、縋りたい温もりも無しで入れていかなくてはいけない状況に、喉が締まり呼吸が引き攣った音を立てた。
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