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番外編第3話

部屋の空気が白く煙るくらい大量に吸われた煙草の残骸が目に映る。 一ヶ月前まではただ煙くてしょうがなかったそれも今では行為を増長させる媚薬にさえ感じてしまう。 「……ふ…っ、……く…ぁ」 声を噛み殺すために歯を食いしばった。 だけどそれさえも許さないとでもいうように後孔を犯す指が増やされ執拗に性感帯を刺激してくる。 ぬるぬると前を扱かれ後ろを突き上げられ、吐射感が競り上がってくる。 「イきそうだな」 笑いを含んだ和己の艶っぽい声が耳を打つ。 反抗するには慣らされた身体は制御しきれないし、好きな相手と繋がることを我慢できるはずがない。 「……かず…き…っ」 掠れるた声で呼べば後孔から一気に指を引き抜かれた。 「なんだ、啓」 喪失に身体が疼く。 前だけはまだ和己が握っているけど動かさずに、逆にせき止めるように根元を握りしめている。 「もう……っ」 「もう、なんだよ。言わなきゃわかんねーだろ」 「……っ」 こいつはいつも卑猥な言葉で求めさせようとする。 機嫌次第じゃうんざりするくらいに納得するまで言わせ続けるし、まじでSだと思う。 「おら、啓。早く言わねーとキツいだろ?」 根元を押さえたまま指先で竿をなぞられる。 「……っ、和己っ…」 別に求めること自体嫌なはずがない。 かと言ってMでも絶対にないけど。 「……和己の…」 壁に額を押し付けて、羞恥を堪えながら言いかけた瞬間―――。 ドアがやかましいくらいに叩かれた。 「せーんせいー!」 「文川先生ー!」 「いるんでしょー! あけてー!」 女子の声が数人分。 開けろ開けろと叫びながらドアを叩いてる。 びっくりして一気に現実に引き戻された俺は慌てるけど、和己は舌打ちをしただけで俺の身体を離そうとしない。 「おいっ、やばいだろ!」 一応小声で言うと、 「無視だ」 短い返事。 しかもカチャカチャとベルトを外す音がしだすからさらに慌てた。 「ちょ、まじで無理だって!」 「先生、いるんでしょー!!」 「約束忘れたのー? みどりんに言われたでしょ、ちゃんとしろってぇ!」 "みどりん"っていうのは生徒指導の緑宮という男性教師。 可愛いニックネームだけど、実際はバーコードハゲの小さなオジサンだ。 「ほらほらー! 開けないとみどりんにチクっちゃうぞー!」 「せんせーぇー!」 諦める気配がまったくない廊下の様子と、何度も出てくる"みどりん"の名前に和己の俺を拘束する手が緩んだ。 その隙に慌てて身繕いをする。 和己はまたデカイ舌打ちをして、煙草を取り出して火をつけていた。 俺は―――どうしよう。 俺がいたって可笑しくはないけど、鍵をかけていたのをつっこまれたら? 「俺、隠れとく」 そう思ったら隠れるのが一番な気がして和己の返事を待たずに準備室とドアで繋がっている狭い資料庫に入った。 それから数分してようやく和己は鍵を開けたらしく女子たちの賑やかな声が一気に準備室に溢れてきた。 「もう、先生ー! 早く開けてよー!」 「やだー! もうケムイー!」 「ぎゃあぎゃあウルセー」 「もうー! そんなこといったらみどりんにチクるよー!」 口の悪い和己に怯むことなくガンガン話しかけてる女子。 雰囲気からして派手目っぽそうな気がする。 薄いドア一枚だからどうしても話は聞こえてくる。 女子たちは勉強を教わりに来たらしかった。

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