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番外編第4話

「先生がちゃんと授業中教えてくれないから悪いんでしょー!」 「そうだよ~、だからみどりんにも怒られちゃうんだよー」 女子たちが笑いながら喋っているけれど、和己のほうはたぶん機嫌悪いせいか無口になったようだ。 それにしても……和己、みどりんに怒られたのか。 確かに和己の授業はかなり適当だから、俺が習ってたころも授業の騒がしさに見回りに来た他の先生に怒られてたことあったなぁ。 そう考えると可笑しくってつい笑いがこぼれた。 それから和己は仕方なさそうに女子たちの質問に答えてやっていた。 俺は暇だからケータイ弄ってたら教えているはずの和己からメールが来た。 『ヤりたい』 思わず吹きそうになって口を押さえる。 どんだけ頭の中エロイんだよ、と思いながらもそういえば中断されたんだったと、身体がほんの少し―――疼いた。 「ねーねー、先生、カノジョいるの?」 俺だってほんとは最後までシたかった。 メールでは送り返せないけど心の中で呟いてたら、女子の一人が和己に質問をしだした。 「ねー、いるのー?」 「………」 俺が訊かれてるわけでもないのに、ものすごく緊張した。 俺は男だし"カノジョ"ではないけれど、付き合っているから答えとしてはYESになるはずだ。 和己はなんて言うんだろうか。 「ねーねー! せんせ~!」 「ウッセェな、お前ら。勉強以外のことに答える義理はねーよ」 心底めんどくさそうな和己の声に、そうだよなって苦笑した。 「えー、ケチー!」 「いいじゃん、教えてよー!」 「わかった、いないんだ!」 「私も思う、絶対いないよね!」 「先生、モテるけど、カノジョとか特定はつくらないんだ~っぽい」 「………」 いる、ここにいる。 って言いたいが言えるはずもない俺は小さなため息を吐き出し室内の様子から気分を逸らそうと携帯でゲームでもしようとするけど、やっぱり気になってしまう。 「先生、クリスマスどうするの?」 「ねー、パーティするんだけど、先生来ない!?」 「あ、私とデートでもいいけどー!」 「ずるいー、なら私もー!!」 「ねー、先生、どう!? 私これでも胸Eカップあるんだよ~、ほら~」 「胸が大きかったら良いってもんじゃないでしょー! 私、あっちのほう結構得意だよ!」 「えー、私はねぇ~えーっと」 「………っせぇ」 激しい女子たちの攻撃に俺のほうが目まいを感じる。 Eカップって……、まさか触ったりしてないよな。 実際の光景がどうなっているのかわからないから、妙にやきもきしてしまう。 「ね~」 「先生~」 「……うるせぇって言ってんだろうが」 ガンっ、と机を蹴る激しい音がした。 そして和己のものすごく低く威嚇するような声が響く。 同時にしんと沈黙した。 「ピーピーギャーギャー言ってるだけなら、出ていけ。お前らの言う"ミドリン"にチクるぞ? 俺が教えるのは勉強だけだ。いいな」 不機嫌さを前面に押し出した和己は結構怖い。 女子たちもさすがにまずいと思ったのか「はーい……」としおらしい返事がしていた。 それから和己は女子たちに「勉強に関しても質問はあとひとつだけしか受け付けない」と言って、5分程度で無理やり終わらせていた。 最後は静かに出て行った女子たち。 彼女たちが来たことで空気が冷え切っているような気がして、俺はなかなか資料庫から戻れずにいた。 座り込んでいるとドアが開いて和己が入ってくる。 「お疲れ」 苦笑を向けると、 「疲れた」 そう言う和己に引き寄せられて口を塞がれた。 性急なキスは和己の不機嫌さが伝わってくるけど、でも別に俺に対して不機嫌なわけでもないし、それに執拗に咥内を蹂躙してくる舌は俺を求めているのがわかる。 「……啓」 熱と欲を孕んだ声で囁かれると、一気に俺の身体は数十分前の疼きをあっというまに蘇らせてしまう。 俺は―――素直に、自分から和己を求めた。 そして男二人がいるには少し狭い資料庫でお互いの気が済むまで肉欲を貪り続けた。

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