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番外編 trick or treat 2

「お菓子が欲しいときはなんていうんだ?」 「は?」 「お前、その菓子の意味わかってねーのか」 「あ、ああ……」 カボチャのお化けを視界に入れ、和己からの意外なリクエストに戸惑いながらも、 「trick or treat」 言ってみた。 和己は相変わらず薄く笑ったまま、お菓子を俺に渡した。 「……ありがとう」 「食え」 「えっ、いま?」 「いま」 なんでいまなんだろう? 開封してひとつ口に放り込んだ飴はハロウィンらしくカボチャ風味。 ……微妙な味、なんてことを買ってもらったのに言えるはずない。 カボチャ味の飴って俺初めて食べるかも。 ハロウィンだからってなんでもカボチャ味にすればいいってものじゃないと思うんだけど。 ……いや不味くはないけど、微妙。 「おい」 「なに」 「味見させろ」 「あー……でもこれ微みょ……っ」 和己が食ったら絶対文句言うレベルだと思う。 だから食わないほうが―――って言いかけたら、言葉が途切れた。 いや途切れさせられた。 塞がれた唇。 夜風は冷たいのに、俺の咥内に侵入してきた舌はやけに熱い。 驚きと、ここまだ外だっていう焦り。 だけど和己がそんなこと気にするはずもなければ簡単に解放してくれるはずがない。 絡みつく舌は俺が含んでいた飴ごと俺の舌を蹂躙する。 人通ったらどうするんだっていう不安は――すぐ消える。 和己が周りを気にしないと同じくらい、俺は和己に触れられるのに弱く、触れられたら周りが見えなくなる。 「……マズ」 肌寒さなんて気にならなくなるくらい熱くなってきたころようやく離れていって和己が呟いた。 「お前よくこんなの買う気になったな」 「……何味が見てなかったし」 「おい」 「なに」 あーやばい顔熱い。それに……俺の半身も少し反応しかけてて冷えた空気に熱を冷まさなきゃと夜空を仰いだ。 「―――trick or treat」 遠くの月が視界に入ったとき、横からその言葉が聞こえた。 ポカンとして和己に視線を向ける。 差し出される手。 「……」 躊躇いながらさっき開封したばかりのお菓子をその手に乗せてみた。 「……おい。お前は人からもらったもんを、そのまま渡すのか?」 「だってそれしか持ってない」 マンション戻って持ってきた荷物見てもなにもお菓子はなかったはず。 まさか和己がそんなことを言うなんて思いもよらなかった。 「コンビニで……」 普段お菓子なんて食べない和己もハロウィンには食べたかったのだろうか。 マンション近所のコンビニで買おうか、と提案しようとした。 だけどそれより早く和己が口を開いた。 「お菓子がないなら、悪戯だな?」 シていいんだろ? と、ニヤニヤと笑っている。 「……っ、な、悪戯って」 「ナニするかなー」 「え、ちょ、明日学校」 「あ? 知るか」 明らかに和己の悪戯なんて明日足腰立たなくなる可能性大に決まってる。 「まぁ一箱は使い切るくらいでイクか」 「はぁ!?」 楽しげに笑ってる和己に俺は焦るけど―――。 「ほら、行くぞ」 早く帰って悪戯してやる、と俺の手を握るその手の温かさに結局俺は困りながらも長くなりそうな夜に期待もしてしまうのだった。 *** 「……っ、もう、むり……」 「あ? まだ半分残ってンだろ」 「明日、三時間目体育だし……っ」 「4時間目は俺の授業だったな。特別に居眠り見逃してやる」 「……そんなのいい……っ、んっ」 前言撤回。 やっぱり和己の悪戯なんて本当に無理! としみじみ心身ともに実感しながら、明日も学校だって言うのに深夜遅くまで俺は和己に溺れさせられたのだった。 【おわり】

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